無料相談する

【専門家対談】監視カメラの防災利用を考える|有用性や取り組み・今後の展開とは?

防犯や見守りに多用される監視カメラ。
『その機能性を生かし、防災利用への可能性を探る』というテーマで、今回は2名の専門家をお呼びし、防災における監視カメラの可能性についてお話をうかがいました。

【対談者】

  • 河本伊久雄氏(以下、河本)
    株式会社河本総合防災 代表取締役
    防災一筋58年の老舗企業。防災用品の販売/システム提案など、防災ソリューション全般を提供している。
    公式サイト→https://www.k-ksb.co.jp/
  • 小林義行氏(以下、小林)
    カメチョ株式会社 営業本部長
    防犯設備士として、防犯カメラおよび周辺機器の販売・工事事業等に携わる。

監視カメラの防災利用の現状

◆現状で、監視(モニタリング)カメラは、防災利用されているのでしょうか。


弊社のお取引企業様のお声を聞く限り、関心は徐々に高まっているものの、実際の利用/活用の意味でいうと、「まだまだこれから」という印象です。
監視カメラを、災害が起きたあとで検証のために使ったり、その後の対策の検討に使ったりというのは以前からありましたが、事前対策や災害発生時の自動検知、適切な対処の為の業務フローに組み込んでらっしゃるようなケースは稀ではないかと思います。

活用余地に関する認知そのものが進んでない点、活用を検討したとしても、カメラをはじめとした機器の導入やデータの一元管理をどうするか等、検討要素が多く足踏みしてしまう点が、課題ではないでしょうか。

◆カメラ事業者側の認識としては、いかがでしょうか。


監視カメラを防災に役立てたいという観点での問い合わせは、少ないもののあります。
例えば、河原に定点カメラをつけて河川の氾濫状況を確認しているケースや、駅などに防犯目的で設置したカメラで、災害時の混雑状況がどのようになっているかを把握するために活用しているケースです。
ただし、河川の氾濫状況でも、インターネットを繋いで遠隔からモニタリングしているだけで、「氾濫の水位がどこまで上昇したらカメラと連動したサイレンを鳴らす」などの対策システムは備わっておりません。
水位計と連動したものはありますが、今後はAI技術を駆使して、カメラ内での分析で、水位があるレベル以上になるとアラートを発報するというような活用が求められるかも知れません。

◆では、現在設置されている防犯カメラや見守りカメラを防災用として利用できますか?


防犯用に利用しているカメラに防災用の機能を搭載するかどうかの問題だと思います。
既設の防犯用カメラを災害発生時に常時監視に切り替えて、状況把握目的で利用することはすぐにでもできるとは思いますが・・・。

防犯にも使えるが防災用としても役立つカメラを設置した方が、経費が抑えられ、安心感は増すということで、受け入れられやすいかも知れませんね。

地震と水害での防災カメラ利用の違い

◆3.11以前と以後、また昨年と今年のような大規模な台風災害があったあとで、採用傾向に変化はありますか?


間違いなく3.11以前は活用されていませんでしたし、その後にYouTubeなどさまざまなメディアで映像が流れたことで、定点カメラや監視カメラの重要性は認識されたと思います。
その影響からか、国土交通省などによる河川監視用の定点カメラの数は年を追って増えていく傾向にあるようです。

◆地震と水害、それぞれどのように防災カメラを活用できそうでしょうか?


地震は、現代の予知技術では発生を予測し切れませんから、起きた時、そしてそのあとでの状況確認に使用されることになると思います。
防災カメラで状況を確認した後、対策本部が何らかの手を打つための情報としての利用や、その後の対策にどのように役立てるかという利用が期待できるのではないでしょうか。

一方、水害の場合は事前に発生予測ができますから、水量の変化や避難のタイミングを判断する為の材料として、カメラの画像情報は重要な役割を果たすことになると思います。

火災でのカメラ利用

◆防災の中で、火災への利用は?


炎感知器というセンサやサーモグラフィック、そういうものはいくらでも活用できます。


その通りですね。
サーマルカメラといって、モニター上で温度が感知できるカメラがあり、各メーカーが製品化していますが、それが防災に使用されているかというと、それほどケースは多くはありません。
活用方法がなかなか見いだせていないのが現状ではないでしょうか。

◆監視カメラで炎を監視するのではなくて、温度センサで監視しているといった感じですか?


そうです。カメラでは温度監視できませんので。

被害を防ぐために、防災カメラに求められること

◆どんな機能、どんな使われ方が今後増えてくると思いますか?


カメラにセンサを連動させたような製品/技術に注目が集まっています。
カメラ自体の技術進歩も目を見張るものがありますが、それでも映像技術から読み取れることには限界がある為、センサ技術を組み合わせることで、より多くの情報取得や状況判断に役立てようという考えです。
取り扱う情報量が膨大になる為、これからはAIとの連動も欠かせなくなってくると思います。

水害を例にとると、ただ水位を測るだけではなく、過去のデータとの比較照合や、自己学習によって災害発生を予測したり警報を発したりといったシステム環境の構築は、近い将来現実のものになると思っています。

◆防災にAIを活用するという点、その可能性や逆に懸念点などもあるのでしょうか?


各消防法に関連する法律が懸念点になるかと思われます。

火災を例に挙げると、火災感知器には消防法が絡むため、突飛な仕組みが作れません。
いわゆる「検定品」ですから、勝手に内部の変更ができないのです。
これは、自動火災報知設備や消火器、消火栓、スプリンクラーなども同様です。

例えば、熱感知器はすべて有線で繋がっていますが、「無線でいいのでは?」という考えもあります。
この点は技術的に無線化することは可能なのですが、消防法で「有線で繋げなければならない」と決められているため、手が出せません。私たちにとっては高いハードルです。
しかし、そういった中でも、いずれAI で炎を検知して避難の指示を出すといった研究に、総務省消防庁や各業界メーカーが取り組んでいます。
この動きに沿って、今まで設置されていなかった特定施設にも、「設置した方がより安全が確保できる」と判断され、ルートCによる大臣認定が下りる場合もあります。

ところが残念なことに、カメラを消防関連の設備として使っているケースや事例は少ないのが実情です。

民間での防災カメラ導入状況

◆現在は公共的な設置が大半かと思いますが、民間での導入例はあるのでしょうか?


あります。
3年くらい前にある大学から、「風力と太陽光を利用して街灯のライトを点け、さらにカメラも設置したい」という問い合わせがありました。
通信機器を取り付け、災害時の非常用の電源、Wi-Fi、監視カメラを設置して、現場の状況をすべて監視できる『ハイブリッド街路灯』という構想でした。
このように、民間でもカメラが防災に有効利用されているケースは存在します。

◆企業のBCPに対して防災カメラの導入は?


生産性も含め有用性という認識があれば、導入は進むと思います。
公共機関任せではなく、自社独自での対策を考えておくことは、大きな意味でのBCPにつながると思うからです。
そういう意識は3.11以降、サプライチェーン系では特に強くなっています。
場合によってはBCPの取り組みについて対策の実態を、取引先から求められることもあるようです。

◆どうすれば認知や導入が進むと思いますか?


最もスムーズなのは、公共機関が積極的に導入し、その事例をもとに民間に呼び掛けていく、という流れがよいと思います。
各種法整備や認可も進むでしょうし。
防災災害対策用品の備蓄なども、今でこそ積極的に導入される企業様が増えてきましたが、当初は民間よりも自治体がまず備蓄を始め、その後民間の企業でも用意するように呼びかけることで導入が加速化した経緯があります。

3.11以降は特にですね。
それまでは、「生産性や費用対効果が分かりにくい」といった理由で導入に二の足を踏むケースが多かったのです。
それが、中堅~大手企業様を中心に「防災対策」をすることがスタンダードになり、企業のブランディングやCSRに影響するまでに変わりました。
助成金/補助金の制度的バックアップも功を奏しています。

ですので、カメラの防災利用に関しても、自治体や官公庁が実績を作っていく中で、各企業がその意義を再確認し独自に導入していくという動きになるのではないでしょうか。

◆その他最近の新しい変化にはどのようなことがありますか?


カメラを搭載したドローンなどの利用もその一つです。
飛ばし続けることはできないので、ドローンにカメラを搭載したバルーンを運ばせ、上空で切り離して定点観測できるようにして、そこから通信で対策本部に画像データを送るといった構想も取り組みに入っています。


技術的にそれほど難しい問題ではないので、実用化の可能性はあると思います。
しかし、日本での監視カメラの導入率は世界的に見てもまだまだ低く、防災用品との関係性で考えてもカメラは補助的なものであるという立ち位置です。
火災報知器や煙感知器があり、その上で現場の状況がどうなっているかを見るための道具といった捉えられ方ですから、カメラ主体というところまでは行き着いていないのが現状です。

防災カメラの将来的な発展性や実現性

◆防災カメラの普及にあたり、御社としてどんなことを意識していこうと思いますか?


『防犯カメラ』『防災カメラ』と切り分けて考えるのではなく、既存の監視カメラを、災害時にうまく生かしている事例を集めて「監視カメラもこうすれば防災に活用できる」という提案ができれば、事業者側の負担も少なく、かつ付加価値にも繋がりやすいと思うので、そうしたソリューション提案を意識していきたいです。
カメラをうまく利用して、防災上足りない情報収集を補完していこうという切り口だと、追加する感覚になり導入しやすいのではないかと思います。


確かに今まで防犯目的で設置していたカメラを、防災にも活用するという提案の仕方は良いと思います。
ただし、今のままではモニタリングや画像記録だけになってしまいますので、「防災ならでは」の価値を付加していくことがメーカーに求められるのではないでしょうか。

そこでは、やはりAIが最も注目されることになると思います。
AIが導入されると、収集した情報を分析して、最も安全な避難経路を指示してくれるようになります。
外部の風向・風力センサとも連動させれば、風向きの情報から最適な避難場所を指示することもできるようになると考えられます。

カメラは画像を的確に鮮明に捉えるのが役目ですから、すべての機能を持たせる必要はないと思います。
カメラで捉えた情報をいかに有効に、しかも速やかに処理し、発信して役立てるかが、防災では重要です。

◆将来に向けて、業界として取り組むことは?


業界として気をつけなければならないことの一つに、例えばハッキングがあります。
また、カメラを付けすぎたために逆に不安を煽ることや、カメラ情報が不要に拡散することでパニックになってしまう可能性も考えておかなければなりません。
本来は安全のためですが、多くの情報を流し過ぎたために、判断に迷いが生じてしまうことなども検討課題です。


防災にカメラが利用されても、その情報が活用されなければ意味をなしません。
カメラの画像情報を垂れ流すのはもってのほかですが、精査してできる限り安全を確保するための情報を提供するようにしていくべきであると考えます。
それを専門で開示するようなサイトがあってもいいような気がしますね。

まとめ|編集後記

今回、防災の専門家とカメラの専門家のお二人に対談をお願いした訳ですが、それぞれの視点から『防災カメラ』にまつわる過去/現在/未来が伺えたように思います。
認知・活用ともにまだまだの分野ながら、災害から安全に身を守るため、また事業を守るために重要なツールであることを再認識した点や、AIの導入をはじめ技術的な進歩に可能性を感じる一方で、現状普及している監視カメラの用途や見方を少し変えるだけで防災利用の第一歩になるのだという点が、非常に印象的でした。

『防災業界』『防犯カメラ業界』が、今後どう共存しシナジーを生んでいくのかとても楽しみです。