【インタビュー】フリービットが提供するクラウドカメラが「カメラ」という言葉を使わない理由【五感箱~SensorCube~】は利用法を考えるだけでも楽しくなってくる

五感箱の説明をする山森氏

みなさん、こんにちは。カメチョ編集部の産賀です。今回は、インターネット接続事業者に対して回線やサーバー設備などのバックボーンを提供しているフリービット株式会社(以下、フリービット)様にお邪魔してきました。一般消費者向けの製品やサービスを直接提供してるわけではないので、フリービットという会社をご存知ない方も多いかもしれませんが、自宅でインターネットを利用している方の中にもフリービットのサービスを間接的に利用しているかもしれませんよ。そんな縁の下の力持ち、ともいえるフリービットがセンサー付きのカメラサービス「五感箱~SensorCube(センサーキューブ)~」を発表したとの噂を聞きつけ、カメチョでも取材を行いました。ご対応いただいたのはサービス提供を行うYourNet(ユアネット)事業部の事業部長であり、技術統括執行役員の山森郷司様です。

[インタビュアー/写真/執筆:産賀、編集:カメチョ編集部]

回線事業者向けにプラットフォームを提供しているのがフリービット

フリービット株式会社YourNet(ユアネット)事業部の事業部長、技術統括執行役員の山森郷司

――今回は「五感箱(ごかんばこ)~SensorCube(センサーキューブ)~」というクラウド録画システムを利用したネットワークカメラ・センサーシステムという製品について教えていただきたいのですが、フリービットという会社を知らない方も多いと思いますので、会社の事業内容について教えていただけますでしょうか。

(山森)
はい、フリービットという会社は、ごくごく簡単にいうと、主に回線事業者様向けにインターネット接続事業のためのプラットフォーム提供事業を柱としている会社です。回線事業者というと少しわかりにくいかもしれませんが、NTTのフレッツ光などを利用する際に契約するインタネットプロバイダー(ISP)の事業者様や、最近話題のMVNOと呼ばれるSIMフリー回線を提供する会社様のことです。フリービットの特徴としては、通信端末から通信のバックボーン、特許技術に基づくIP電話、クラウドサービスのサーバーまでまかなうことができる数少ない会社です。ISP事業をやりたい、MVNO事業やりたい、とかクラウドサービス事業をやりたい、と言う企業様のビジネスをバックアップ、サポートするという理念を持って事業を行っています。

――ありがとうございます。実際にコンシューマー向けにサービスを提供することは無いものの、インターネットを利用する際には多くの人がフリービットが提供するバックボーンを使っているかも知れないということですね。では、その中でもYourNet事業部はどのような事業内容なのでしょうか?

(山森)
YourNet事業部は通信回線事業者、主にISP事業者と呼ばれるサービス事業者向けにサービスを卸しています。ISPの接続サービスを主として、オンラインストレージなどのオプションサービスも提供しており、回線事業者様がこれらのサービスを自社サービスとしてリブランドして提供するためのサポートも行っています。

――なるほど。では特定の製品・サービスがあるわけではなく、通信事業者のサポートを行うために必要なサービスを取り扱っている、というイメージですね。まさに縁の下の力持ちですね。

(山森)
そういうことになります。ですからYourNetという名称をISPブランドやモバイル回線の名称として一般のユーザーが目にすることはありません。代表的なサービスとしてはISP事業者様向けの回線、サーバー設備、ソフトウェアになります。そしてそれに付随するEメールシステムやクラウドストレージのシステムなどですね。

しかし、時代の趨勢からして、ISPが旧態依然としたISP事業のみを行う、ということは無くなってきていて、別のオプションサービスを付加していかなければならないと考えています。つまり、提供できるサービスのラインナップを増やして顧客満足度をいかに確保するのか、が課題になっています。

――その選択肢として今回発表された五感箱が出来たというわけですね。

五感箱の4つの特徴

(山森)
その通りです。こちらに実際の製品を用意していますので解説しますね。

五感箱の説明をする山森氏

――ありがとうございます。見た目はよくあるネットワークカメラのように見えますが・・・。製品の特徴について教えていただけますか?

(山森)
わかりました。まずこちらの五感箱ですが、企画段階は、実はフリービットとしては「カメラ」を作りたいというわけではなく、オールインワンのセンサーによる見守りサービスとして企画したと言う経緯があります。

――ということは、映像を記録するカメラである必要はなかった、ということだと思いますが、どういった問題意識から製品の着想を得たのでしょうか?

(山森)
はい、元々ネットワークカメラや防犯カメラを導入する際の問題として、まず設置工事も含めて価格が非常に高額であるということ。そして見守りという用途には使えるものの、「見られたくない」、「監視されたくない」という問題意識があるのではないかと考えていました。これまでのカメラは、は基本的には「視る」という機能に特化している関係上、各種センサーの機能は付加的なものでしかなかったと考えています。この製品の特徴について具体的に説明しますが、主な特徴は4つあります。

小さな筐体に多くの機能

1つ目の特徴は小さな筐体の中に機能を詰め込んでいる、ということが挙げられます。このカメラの中にフルHDの解像度のカメラ、ナイトビジョンに対応するための赤外線LED、明るさを検知するための照度センサー、温度、湿度のセンサー、音声を拾うためのマイク、そしてスピーカーですね。そして動きを検知する人感センサーです。カメラの映像やセンサーで取得したデータの閲覧はスマートフォンやタブレットのアプリで確認します。センサーに関しては、検知を行うかどうかを曜日や時間帯によって細かく指定することもできます。

――なるほど、温度や湿度まで測れるというカメラは今まであまり無かったかも知れませんね。

データはクラウド上に安全に保管

(山森)
そして2つ目の特徴は、クラウド上に各種センサーやカメラの録画データを保存しておけるということ。クラウドサーバーに録画することでデータの紛失などの心配とは無縁になりますし、録画機を五感箱の設置場所に用意する必要もなくなります。

初期設定や設置が簡単

3つ目の特徴は設置が簡単なことです。この製品は非常に設置が簡単で、インターネットとの接続はWi-Fiで行うため、難しい配線工事が不要です。また、非常に消費電力が小さいので、このようにモバイルバッテリーからUSBケーブルで給電することもできます。設置が簡単と言うことは、つまり場所の変更も簡単ということですので、一時的に見ておかなければならない場所のモニタリングのも効果を発揮します。

モバイルバッテリーからの給電に対応しており、USBのバスパワーでの運用が可能。

モバイルバッテリーからの給電で動作する省電力設計。電源が確保できない場所でも設置が可能だ。

個人情報を取り扱うからこその安全性

4つ目の特徴はセキュリティが高い、つまり安全に利用が出来るという点です。これは初期設定が簡単に出来る、と言う部分にも関わってくるのですが、カメラの初期設定は本体についているQRコードをスマートフォンで読み取れば設定が終わります。複数人でモニタリングを行う場合ももちろん想定していまして、一番最初にQRコードを読み取った端末が「親機」として設定され、親機の端末が接続情報を別の端末「子機」に送ることが出来ます。ただ、子機がペアリングするためには親機が自由に発行できるPINコードを入力する必要があります。もし、法人が五感箱を利用していて、子機を持っている職員が異動や離職で接続する必要が無くなった場合にはPINコードを再発行し、その人にだけ伝えなければよいわけです。

――カメラの契約台数を増やすことも出来ますか?

(山森)
もちろん可能です。スマホアプリとのペアリングもアプリ上のメニューから簡単にひも付けることができます。

敢えて「カメラ」という言葉は使っていない

お分かりの通り、この製品は「五感箱〜SensorCube〜」という名前で、「カメラ」という言葉は使っていないんです。

――言われてみれば確かにそうですね。五感というのは人間の感覚から引用した名称ですが、その中の一つとして「視覚」、つまりカメラの機能がある・・・と?

(山森)
そうなんです。実はこの製品はシステム上カメラをOFFにすることもできるんですよ。というのも、カメラという名称を使うことで用途が限定されてしまうのではないかという理由なのですが、センサーの機能のみを使うことでも見守りの機能を果たすことができます。

利用者の具体的なシーンについてはある程度の柔軟性を求めて設計してあります。というのも、具体的なニーズから発想して設計しているというよりむしろ、フリービットという会社自体がプラットフォームを提供事業を運営していて、提供しているサービスの使い方は事業者やユーザーが決めてもらっているので、そういった使い方も良いのではないかと考えています。
例えば、プラットフォームとしてクラウドサーバーを提供する場合でも、そのサーバー上にオンラインゲームのシステムを構築するのか、Eコマースシステムを構築するのかというところは自由であることと同じですね。

実は企画当初は想定していなかった用途もありました。最初は見守りだけを想定していたのですが製品の正式リリース前のテストマーケティングとして、お付き合いがあった事業者さまに製品をご紹介したとこと、当初想定していなかった利用法が次々に出てきたんです。

――具体的にはどのような活用方法だったのでしょうか。

例えば一人暮らしの高齢者などの見守りで言うと、カメラが無くても一定期間部屋の中の照度が変わっていなかったり、冬に暖房が付いていない温度になっていたり、逆に夏場に冷房が付いていない温度になっていたり、という異常に気づくことができる。というニーズですね。その他にも、工場の労働環境を監視するために温度と湿度をモニタリングにて事故を防止するなども変わった使い方も出てきました。

五感箱をスマートフォンで利用した時のイメージ

スマートフォンアプリの画面デザインも洗練されており、温度や湿度の変化も折れ線グラフでわかりやすく表示されている。

通信回線やクラウドサービスを提供してきた実績があったので、問題はハードウェアだけだった

――開発時に苦労した点などがあれば教えていただけますか?

(山森)
実はカメラ本体は自社で開発するのではなく、他社製品を利用してサーバー機能やモバイルアプリのみを開発しようと考えていたのですが、実際探してみると、フリービットが求めるセンサー全てを含む製品が無かったんです。ですから本体となるハードウェアも自社で企画して作るしかない、ということになったのでその部分は大変でした。ですが、ハードウェアの設計が出来れば、そのほかの部分はフリービットがこれまで培っていた技術を応用することで自社内で開発することが出来るとわかっていました。

――通信事業者へのプラットフォームを設計、運用していたフリービットだから出来たとも言えるサービスですね。通常のネットワークカメラだとONVIFなどの共通規格に合わせて設計するので温度や湿度、照度のデータを取り扱うことが難しいのでサーバー構築やアプリ開発を独自で行うノウハウが無ければ五感箱も今のような形になっていなかったかも知れませんね。では、今後のサービスの展望や機能の拡張について教えてください。

(山森)
そうですね。今回発表した五感箱は防水・防塵の機能が付いていないので、アウトドアで使えるように機能を拡張していきたいですね。そうすることで利用用途が格段に増えるはずです。あとは、管理側の使いやすさを考慮して複数台のカメラを一度にモニタリングできるマルチビュー機能があればよいと考えています。これは既に開発を行っているものですが、現状iOSにしか対応していないアプリを、Android端末でもモニタリングができるようにAndroid版アプリのリリースを2017年秋ごろに予定していますのでご期待ください。

――これからのサービス展開に期待しています。本日は長い間ありがとうございました。

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